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回復の望めない進行する疾患、たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)のような神経疾患や慢性呼吸器病、慢性心不全患者をも含めた致命的疾患を病む人に、医師、訪問ナース、ソーシャルワーカー、ホームヘルパー、チャプレン、訓練されたボランティアなどのチームによって在宅患者にケアが提供されているのです。そして、この働きの中心は訪問ナースが果たしています。ここではホスピスという建物があるのではなく、患者の自宅を訪問してケアを提供しているのです。これを在宅ホスピスケアといいます。
私は一人のナースとともに水上生活者(ボートに住む)の夫婦で、妻が呼吸困難を訴える慢性呼吸不全患者を訪問しました。
湖畔で車を降りて水上の小さな2部屋のボートを訪ねたのです。ナースは、酸素吸入をしながら、ベッドに寝ている患者を起こして診察しました。この方は、毎朝起床後に洗面が自分でできるように起床の20分前に塩酸モルヒネの1O?錠を内服し、呼吸困難が楽になったところで起きて洗面するというのです。食事の準備、その他の家事は引退したご主人がやっていました。
ナースが要領よく問診し、診察し、治療上の指示を与え、それを経過記録に素早く書き込む作業を見ていますと、日本の開業医がやっている様子とまったく同じという感じを受けました。この訪問ナースは、ナースプラクティショナーとしての研修を受け、医師とは連絡をとりつつも、独立した診療行為をやっています。
湖面は道路よりずっと低いので、患者が病院に受診したり、入院したりする時は、そのボートハウスの側に患者をつり上げるリフトを設置しておき、それに体を縛ってリフトでつり上げ、道路の高さまで上がった所で自動車や救急車に乗れるように工夫されています。
日本では、呼吸困難時にはモルヒネは呼吸中枢を抑制するので

 

 

 

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